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モーニング娘。の歌詞から考えるトレインスポッティング

映画 アイドル

トレインスポッティング」1996/英/ダニー・ボイル

 

トレインスポッティング 特別編 [DVD]

1.人生に望むものとは

  働いて、車を買って、家を買って、子供を儲けて、年金をもらって…そんな「安定」した生活に魅力を見出だせない。みんながやってるそれって本当に楽しいの?それでいいの?そんなことよりもっと特別に楽しいことが自分にはあると思う。

「俺たちあんな大人にだけはならないようにしような」とは屋形船で宴会に興じるサラリーマンを見下ろした二宮和也の口から放たれる嵐主演『ピカ☆ンチ』の台詞ですが、トレインスポッティングにおいてもそういった「普通」は唾棄すべき事柄として想定される。

「普通」であることへの絶望として私が一番に浮かべるのが、モーニング娘。「Do it! Now」の歌詞だ。

どんな未来が訪れても それがかなり普通でも

一歩一歩でしか進めない人生だから立ち止まりたくない

- Do it ! Now

 一見すると前向きな歌詞にも取れるが、裏を返せば立ち止まってしまいたくなるような人生の先に待ち受けているのがすなわち「普通」の未来であるということにふと気付いてしまった時の愕然とした感情は忘れられない。そしてそんなメッセージを発展途上の頑張る女の子に宣告された時、己の現状と照らしあわせて、自分の一歩一歩が到着した足元を見た時、もうどうしようもない気持ちになってしまう。つんく詞では横並びの美しさは尊重されず、特別であることの重要性が何度も語られる。ザ☆ピ~スだともっと直接的で、もう「普通」は洗い流されちゃう…
個性を出す 異性を奪取 普通をWASH 速攻でDASH
- ザ☆ピ~ス
one of themになることを怯えていて、自分の無限の可能性に特別を信じているから攻撃的に否定できる。そんな若さを象徴する歌詞が、この映画の主人公レントンを見ていて思い出されたのだった。
 

2.む~ずかしいことはわ~かんない

 映画は続きます。そんなレントン、こんな生き方がいつまでもしていていいものじゃないだなんてことは勿論分かっている。現実的な真面目な考えだって浮かびはするが、真剣に考えるのは辛い、辛いから楽しいことがしたい、楽しいこと=ドラッグで完全に典型的な負のループに陥る。このわかっちゃいるけど…系の歌詞、ありますね。モー娘。の歌でよく見るやつですね。
ぼーっとしてても輝かない努力で美貌を手に入れて
わがまま出来るのも若いうちだけ いい年を過ぎたら妥協するのだろうか
難しいことはわかんないカワイイ服着てみたい
- 私のでっかい花
夢は全部真剣だから大人になる条件を教えて欲しい 
だけどなんだか面倒くさいそのうちテレビを買い換えないといけないね
  頭の片隅に冷静な自分がいて、未来を考えてないわけじゃなくて、でも取り敢えず手近な娯楽で今に逃げ込んじゃう悩める女の子の気持ちを歌ったこの二曲。「カワイイ服」を「ヘロイン」に置き換えたらまんまいける。(いける?)ぼんやりとこうすべき、という方向を自覚していても明確に向き合わないのだからそれは答えも出ないのだ…。できることだけしてたら成長しないって、そんなこと知ってるからそんなこと言うならどうすべきか全部教えてくれ!!と自己中心的なことを願ってしまう。(そんなワガママにつんく先生が答えてくれたのが最新シングルTIKI BUN、寝不足は寝るしかない。真理。)

 「人生を選べ」がこの映画のキャッチコピーだが、こうすべきという明確な指標がない人生で、分岐点がどこにあったのかというのは振り返って考えるまで分からないものだ。そして、レントンのヤク中の状態は、あらゆる選択肢と向き合うことを逃避した結果だ、と振り返ることができると思う。ここでも例として一つ歌詞を挙げたい。

ランチも道もバーゲンのブーツも ただの友達のアイツのプロポーズも 
究極的な選択 酷だな~選べねーや
こんな時こそ冴えて欲しいヒトの第六感って奴
- その場でビビっちゃいけないじゃん!
 じゃ〜んびびっちゃいけないじゃん!とかなりコミカルな曲、しかし冷静に聞くと言ってることは案外冷静。選ぶことはつまり片方捨てることだ。ところが前述した通り、行動や判断の基準を他人に求めてしまうタイプの人間は、些細な問題から人生の大問題までそれが正解だと誰かに言ってもらわなければ自信を持って決められない。よって思考と決断を全放棄して突然第六感に頼るしかない。ぶっ飛んでるようですごく共感できる地に足ついた歌詞だなと改めて聞いていて思いました。そしてレントンは本能という第六感に導かれるがままにドラッグ浸りの沼へ浸かってしまっているわけですね。
 
 しかし、悪友の1人の逮捕を受け、いよいよドラッグ断ちを決意します。
部屋のベッドでは今までビビって決めきらなくて向き合うことを避け続けていた全てが幻覚となって彼に迫る。死んでしまった赤ん坊、クラブでナンパした女子高生、自分が巻き込まなければ健全だった筈の友人…。部屋が細長く狭まり、壁は歪んで見える。
この場面物凄く好きな所なので、こういう映画もっと見たいと思って時計仕掛けのオレンジを借りた、の、ですが…はい。*1
 

3.プラチナ期から這い上が…る?

 さてそんな禁断症状を乗り越え見事ドラッグ断ちに成功したレントン
しかし最高の快楽という逃げ口を排し待っていた生活は、
超面倒くさい なんかつまらない 何がしたいのかわからない
特に用がない 特にする気ない 思った以上に楽しくない
- SONGS
であり、無気力で退屈この上ないものだった。変わらなくちゃ、と言うダイアンの言葉によってレントンは首都ロンドンへと出て、仕事に就く。
 正しい生活…が始まったのも束の間。堕落の使者、もとい地元の悪友が1人もう1人と転がり込み生活はなし崩し的に転落。そして大きな麻薬取引に誘われたレントンは、遂に断っていたドラッグを解禁。恨みはするが、馴染みの友人の誘いは断れない男なのだ。危なっかしい密売取引もなんとか成功して、大金は見事手中へ収まる。俺たちなかなかやるんじゃない?地元じゃ負け知らずなんじゃない?si!仲間ってサイコーなんじゃない?
なにはともあれ仲間っていいな仲間ってステキ
- なには友あれ!
と、大きな壁を共に乗り越えた仲間たちと、まずは一杯祝杯を上げに酒屋へ向かう。しかしそこで悪友の中でも一番の問題児であるベグビーが、また些細なことで客と流血騒ぎの喧嘩沙汰を起こす。こんなヤツらと一緒にいてもいいのか…ふつふつとまた疑問が積り重なる。
そして、
今放て!その場凌ぐな 厚化粧よりハートに描こう
抜け駆けしてでも伸し上がる気がないなら wow 明日はない
 レントンは、仲間四人で泊まったホテルから分前全てをこっそりと持ち上げ忍び足で抜け出す。裏切ってしまったことへの言い訳を並べ立てるが、事実はどうしたって変わらない。
でもそれがどうしたって言うんだ。俺は今度こそこれで人生をやり直すんだ。
真っ当な生活。それが俺の求めているものなのだから。
(どんな未来が訪れてもそれがかなり普通でも)
一歩一歩でしか進めない人生だから立ち止まりたくない
- Do it ! Now
 映画のラスト、彼は立ち止まらない。走って走って走りぬけカメラに近づいたレントンの笑顔のアップで本編は終幕を迎える。「Do it ! Now」の歌詞は真っ直ぐであるがゆえ攻撃的であるが、その分ひたむきさに溢れている。まさにレントンもまた、人生に希望を見出すことに成功し、そこに向けて一歩を走りだしたのである。
 ナレーションの独白で語られる彼の見出した希望、それは冒頭で否定した「普通」の価値を認めるものだった。第六感による選択を捨て、思考により決めた道は結局自分が何者でもない普通であることを自覚し、世間でいうところの幸せの定義に自分を当てはめてゆくことだったのだという点で、レントンは「普通の青年A」だったのだ…
彼氏が欲しいけど一人が楽みたい それでも本音はね彼がほしい
いわゆる普通の女の子
- 普通の少女A
別にそれまでのしていたことが世間で推奨されているものと違ったって案外本人は楽しいしほっといてくれと思うし、って口に出すと全部事実なのに強がりの言い訳のようになってしまうから世間に迎合した方が楽という気持ちも大きい。
 
パソコンの学校に行きたいな 将来に二人でお店出すため
ハチャメチャな人生じゃないよ 私なり考えて行動してるよ
パソコンの学校行っても店開けねえから!??
…何を言っているのだろう、と10人中10人は思う歌詞がモーニング娘。にもありますが、周囲から見たら麻薬密輸で得た金を持って逃げる男が語る「普通」など、破綻した論理にしか聞こえないだろう。しかしそれはレントン自身の中では考えぬいた末に出した選択の結論であるのだ。「人生を選べ」、映画のキャッチコピーであるこの問いに対する答えは、爽快な笑顔の主人公から非常にまっすぐな言葉で返される。
 
でもまあ
ハリウッド映画のヒロイン気取ってパンを片手に歩く
ここが日本と気付くには意外とすぐだった…
- 出来る女
 この結末でレントンの台詞を文字通りの未来として受け取る視聴者はまずいないだろう。所謂死亡フラグというあれである。逃亡が上手くいくはずはない、必ずどこかからアシがつくだろう。その時追い詰められた彼はきっとまたヘロインに手を出すだろう。確信を持たせてプツッと迎えるエンドロール、レントンが現実を思い知るのは意外とすぐだった…に思えてならない、史上最高に爽やかで悲哀のあるエンドである。
 
遠い未来はわかるのに明日の事が決められない
優柔不断とは違う oh my heart
 漠然と、自分が信じていれば方向くらいは思う方へ向かうものと思ってたけど、明日の明日の明日のその先が地続きで未来であるということがどうしたって実感できないんだよな~
大人になれば大人になれ…ない。
 何が言いたいかというとモーニング娘。'15*2は最高だということと、トレインスポッティングがスマッシュヒットに好きだということ、そして真面目に書いていた感想がPCの強制終了で全部消えたということです。
 
14章~The message~(初回生産限定盤A)(DVD付)

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(印象的なシーン)
・禁断症状に襲われる寝室のシーン こういう頭おかしい演出すっごい好きなんだ
・山に登ろうと誘うトミーに向かって、草原にて吐き出す叫び横顔のカット「この国はクソだ!」 たまらない
・クラブで誘った女の子が未成年の女子高生だと判明 ダイアンが知性のあるかわいさ。あとダイアンのレントンへの誘い文句がこの間読んだ「人をナンパするにはラベリングが重要」のまさにそれでびっくりした(あなたはやんちゃに見えるけど実は繊細で付き合うと男らしくて優しい、そうでしょう?)
 
木更津キャッツアイを思い出した
ユアンマクレガーかっこい

*1:思っていたのと全然ちがった(下記記事参照)

*2:こういう場合って’年が付いてる方が総称として正しいのかどうなのかよくわからない