繁忙期にベタ甘ラブストーリーを/最近観た映画雑感
・「ユー・ガット・メール」1998/米/ノーラ・エフロン
昼は町の本屋さん VS 都会の大型書店!夜はメル友!(当人たちは気付いていません!)というベタベタのストーリーが疲れた身体にじんわり染み渡るかわいいラブストーリー。
とにかくキャスリーン(メグ・ライアン)の経営する絵本屋さんがべらぼうにかわいい!メロメロ!住みたい!こんな空間で働きたい!おさるのジョージ、メイシーちゃん、ぞうのババールetc、、好きなものだけを詰め込んだあったかなお店だなあというのが画面越しにもヒシヒシと伝わってきて、こんなお店が自分の町に合ったらついつい色んな本を手に取ってしまいそう。
故にメールの相手がキャスリーンであるということにジョー(トム・ハンクス)が先に気づいた時、現実での距離を縮めるために周到に動いていく所が気持ち悪くて引いてしまった。調子良すぎでは…いや本人たちは幸せそうなので外野は黙っときますが…
こんなにステキな本屋さんを潰されて、でもそれもしょうがないわねって、そんなのいいのー!?
・「ワンデイ」2011/英/ロネ・シェルフィグ
ジェーン・スーさんの名著『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』の中で語られている問に、男女間の友情は成立するのか?というものがある。そこでの回答はズバリ、ノーである。なぜなら、もし、「よく気が合い・話していて楽しく・一緒にご飯を食べていて楽しい相手」を「親友」と言うのならば、それは著者にとって理想の恋人像となってしまうからである。
・・・ということをこの映画を観ていて思い出しました。
親しくなりたい、という感情の延長にステップアップが必要ないのを気楽と取るか絕望と取るかは、結構年齢を重ねるごとに変わってくる気がする。
エマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)が並んだ姿は正に美男美女。誰もがお似合いだと一目で思うような彼らは、しかし大学の卒業式の夜に一つの約束を交わす。僕たちずっと親友でいようね、と。翌年、翌々年、5年、10年、20年…変化する彼らの人生を、約束を交わした7/15だけを切り取って描く物語の構成が見事。
最初の、卒業式後にたむろしてるシーンの感じ、わかるな~って一番印象的で好きだった。と思ったらなななんとロネ・シェルフィグ監督…!『17歳の肖像』!!!!!ギャーめっちゃ好きなやつ!!!!瑞々しくてちょっぴりタバコの匂いがする感じの思春期の女の子の描き方が抜群に好みだ。
・「イルマーレ」2006/米/アレハンドロ・アグレスティ
彼女が手放した家に住んだのは2年前に生きる男だった。
2004年のケイト(サンドラ・ブロック)と2006年のアレックス(キアヌ・リーブス)が、時を超えて手紙を届けるポストを通しての文通で親しくなってゆく話。
この二人を隔てる間が「2年」という所がミソで、絶対会えなくもない、すぐに会えるわけでもない、という絶妙な時間だなあと思った。
後から知ったのですが、どうやら2000年上映された韓国映画のリメイクとのことでした。
・「エレファント」2003/米/ガス・ヴァン・サント
「キスも知らない17歳が銃の撃ち方は知っている」キャッチコピーが最強のやつ
が、この映画を観終わった後に聞くともつれるような感情を巻き起こされてものすごくどんよりした気持ちを作る曲となる。
同監督では『永遠の僕たち』だけは鑑賞済で、あー言われてみれば痛々しい美しさの切り取り方が雰囲気一緒かもなあと思った。画面が全部かっこいい、そしてDVDジャケットが全部かっこいいやつだ!特に「パラノイドパーク」は、手に取っては棚に戻しては…をいつもしてるのでかなり見覚えがあるぞ。あのジャケット何度見ても生田斗真さん!?って思っちゃうんだよね。
これも縁だし借りてみようかな…と思うけど、でもどれもこんな調子なのだとしたら、そ、それはちょっと体力ある時にしようかな
「明日死ぬんだ。キスしたこともないのに」「してみる?」
・「マイ・ブルーベリー・ナイツ」2007/香・仏/ウォン・カーウァイ
エリザベス(ノラ・ジョーンズ)とジェレミー(ジュード・ロウ)のなんてことない恋愛映画…ではない。女賭博師レスリー(ナタリー・ポートマン)が出てきてから、あれ、これ、ジュード・ロウいらないんじゃないの?と思うほど物語の雰囲気が一転してびっくりした。「見ると恋がしたくなる♡」みたいな触れ込みで売るの詐欺だろこれ!!
彼氏に浮気されて捨てられた夜、なんでフラれちゃったのかなあってカウンターで愚図っていると「ごらん、1日の終わりにショーケースに残るブルーベリーケーキを。ショートケーキが売れ残るなんてことはまずないんだ。でも、そんなことはブルーベリーケーキがまずいだなんて理由にはならないよ」って言ってくれるジュードのいるカフェはどこにありますか
カウンターに持て余すように長い脚を乗せて彼女がやって来る姿を待つ所もとってもかわいい。「今日は遅かったね?」ってフランクを装って話しかけるも「いや別にそういうつもりで来てたわけじゃ…」ってこれまたフランクに距離を置かれちゃうションボリ笑顔もキュンしかない。ただ、そういう映画ではない。そういう映画ではない。(二度言う)
・「ダンサー・イン・ザ・ダーク」2000/典/ラース・フォン・トリーア
セルマ(ビョーク)の空想が鮮やかに世界を彩るほど、灰色がかったリアルな描写が引き立っていた。週末が楽しいほど月曜日が淀んで見える気持ちに例えたい。
もうとにかくド欝!救いなし!と評判をきいていたから覚悟していたものの、辛くなった辺りでミュージカルシーンが挟まれるので、観ている最中は意外とそうでもないかも、という印象だった。けど、鑑賞後にお風呂で目を瞑ったり、ふと部屋に1人になった時などに陰惨な映像が頭をよぎり背後を振り返れなくなることに気づいた。本当の地獄の門は、それと分かるようには開かれていなくて、日常に生活にふとある隙間に滑りこむように足を踏み入れてしまうものなのかもしれない。
・「ノッティングヒルの恋人」1999/米/ロジャー・ミッシェル
な、納得いかね~~~ の連発だった。
「ユーガット~」のオマージュ?リスペクト?男女逆転版。映像の感じは軽やかで素敵だった。しかしアンジェリーナ・ジョリー演じるヒロインのアンの身勝手さに全く共感できず・・・
別にウィリアム・タッカー(ヒュー・グラント)が旅行書で働いてる設定である必要ないのと同じくらい、大スターアンが一般男性ウィリアムをわざわざ選ぶ必然性が見出だせないように感じた。二人の関係ははてな?だったけど、それに合わせて周囲の人間が態度をコロコロ変えるのがおもしろかった。芸能人という色眼鏡で見て、きゃあきゃあ騒いだと思ったら、勝手に期待して調子が悪くなったらすぐ手のひら返しっていうの、わかるなあ、って思っちゃうのが痛い。
モーニング娘。の歌詞から考えるトレインスポッティング
「トレインスポッティング」1996/英/ダニー・ボイル
1.人生に望むものとは
働いて、車を買って、家を買って、子供を儲けて、年金をもらって…そんな「安定」した生活に魅力を見出だせない。みんながやってるそれって本当に楽しいの?それでいいの?そんなことよりもっと特別に楽しいことが自分にはあると思う。
「俺たちあんな大人にだけはならないようにしような」とは屋形船で宴会に興じるサラリーマンを見下ろした二宮和也の口から放たれる嵐主演『ピカ☆ンチ』の台詞ですが、トレインスポッティングにおいてもそういった「普通」は唾棄すべき事柄として想定される。
「普通」であることへの絶望として私が一番に浮かべるのが、モーニング娘。「Do it! Now」の歌詞だ。
どんな未来が訪れても それがかなり普通でも
一歩一歩でしか進めない人生だから立ち止まりたくない
- Do it ! Now
個性を出す 異性を奪取 普通をWASH 速攻でDASH- ザ☆ピ~ス
2.む~ずかしいことはわ~かんない
ぼーっとしてても輝かない努力で美貌を手に入れて
わがまま出来るのも若いうちだけ いい年を過ぎたら妥協するのだろうか
難しいことはわかんないカワイイ服着てみたい- 私のでっかい花
夢は全部真剣だから大人になる条件を教えて欲しい
だけどなんだか面倒くさいそのうちテレビを買い換えないといけないね- なんちゃって恋愛
「人生を選べ」がこの映画のキャッチコピーだが、こうすべきという明確な指標がない人生で、分岐点がどこにあったのかというのは振り返って考えるまで分からないものだ。そして、レントンのヤク中の状態は、あらゆる選択肢と向き合うことを逃避した結果だ、と振り返ることができると思う。ここでも例として一つ歌詞を挙げたい。
ランチも道もバーゲンのブーツも ただの友達のアイツのプロポーズも究極的な選択 酷だな~選べねーやこんな時こそ冴えて欲しいヒトの第六感って奴- その場でビビっちゃいけないじゃん!
3.プラチナ期から這い上が…る?
超面倒くさい なんかつまらない 何がしたいのかわからない
特に用がない 特にする気ない 思った以上に楽しくない- SONGS
なにはともあれ仲間っていいな仲間ってステキ- なには友あれ!
今放て!その場凌ぐな 厚化粧よりハートに描こう
抜け駆けしてでも伸し上がる気がないなら wow 明日はない- 恋愛ハンター
(どんな未来が訪れてもそれがかなり普通でも)一歩一歩でしか進めない人生だから立ち止まりたくない- Do it ! Now
彼氏が欲しいけど一人が楽みたい それでも本音はね彼がほしい
いわゆる普通の女の子- 普通の少女A
パソコンの学校に行きたいな 将来に二人でお店出すため
ハチャメチャな人生じゃないよ 私なり考えて行動してるよ
ハリウッド映画のヒロイン気取ってパンを片手に歩く
ここが日本と気付くには意外とすぐだった…
- 出来る女
遠い未来はわかるのに明日の事が決められない
優柔不断とは違う oh my heart
14章~The message~(初回生産限定盤A)(DVD付)
- アーティスト: モーニング娘。'14
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- 発売日: 2014/10/29
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観終わった映画を記録しておくとなかなか楽しいです。
テレビをリアルタイムで観ることが少なくなってきて、その分レンタルショップで借りてきた映画を見るようになった。
観る量が増えても観たそばから忘れていてはなんだかなと思ったので記録用に「coco - 映画レビューサイト」へ登録をした。twitterのアカウントを使って登録できて、ツイートの中に映画の名前が含まれたりすると、勝手に拾い上げて記録しておいてくれるのがおもしろい。略してても拾ってきたりして、結構精細なアルゴリズムでびっくりする。
ブックマークに観終わった映画のポスターを並べられるのがログ取り好きには達成感でニヤニヤできて嬉しいです。
tyhs73 さんのマイページ / 映画レビューサイト coco
しかしこのサイトで私が一番ありがたいのは別にあって、それがランキングのオールタイム投票だ。これはレビュアー(=サイト登録者)がマイページで任意で登録できる自分だけの映画ランキングを集計して、総合ランキングとして表示してくれるもので、過去の白黒映画から上映中の最新映画までが全て一括りで並べられる。わざわざ映画レビューサイトに登録している映画好きの人たちのオススメするものが上から順番に一覧できるので、何か手堅いものが観たいと思った時はこのランキングで目に止まったものを選んでおけばバッチリである。特に映画に詳しくない私にとっては、いわゆる「映画特集」の雑誌などに頻出するような、押さえるべきところを押さえるという映画知識の地盤作りというか、共通言語を学ぶ最短路のような気もしている。映画対談とか読んでも当然のようにバンバン出てくる作品がわからないと面白みがちっとも分からないし。
とはいえ多くて週に2本観るのがいいところだから、平均すると年間5、60本程だろうと思うので、ベスト100!を観ようと思ったら丸々2年もかかるんだな…
映画祭とかも、知っておけば指針になりそうな気がするので、わかりやすい新書とかあれば読みたい。ありそう。
「時計じかけのオレンジ」が全然だめだった話とマジョリティについて
「時計じかけのオレンジ」/1971/米/スタンリー・キューブリック
すこぶるダメだった。
正しくバイオレンス映画、というのだろうか。もうとにかく前半の意図的な不快描写がただ気持ち悪いと感じてしまった。後半からのラストの落とし方がミソとレビューを見たのでグッと堪えて最後まで見たが、もう全然ダメだった。映画が良いとか悪いとかではなく、圧倒的に自分の感覚と合わない。「アメリ」があんまりピンと来なかった時の感覚に似ている気がする。
良いものとされているものを受け入れられない時、とにかくめちゃくちゃ「何故!!?」と考える。これは、自分がことエンタメ分野においてはベタ好きというか、マジョリティ側に属している自覚があるからだ。アイドルだって好きになる子はほとんど一番人気のセンターだし、部屋の本棚に並んでいるのは映像化がされているようなベストセラーが多い。
いつだったか忘れたか、かなり昔の「このマンガを読め!」を読んだ時に載っていたインタビューで「結局、売れているマンガはおもしろい。売れていないマンガにも面白いものは勿論あるんですよ。でも、面白いものが読みたいと思ったらベストセラーを読めば間違いないのは確か。」と言った旨が語られていて、すごく印象に残っている。「自分だけが知っている面白いマンガがあると思っていたい気持ちもわかるけど、ひねくれずに売れているマンガを読むと、やっぱりパワーがある、驚くほど面白いんですよね」みたいなことも言っていたような。この言葉が当時ものすごく目からウロコで、いや当たり前っちゃ当たり前のことしか言ってないのだけど
確かこの時引き合いに出されてたのは「スラムダンク」で、何故かずっと読んでこないまま斜に構えていたがいざ読んでみたら仰天物に素晴らしかったそうか1億部売れるってこういうことなんだ…みたいな話だったと思うんだけど、全てが曖昧で何回も反芻しているからかなり自家創作されている気が…
さておき
とにかく多様な趣味趣向を包容するメディアコンテンツであるマンガや映画といった中で、圧倒的多数に支持されるものを支持する中に自分が含まれないとなると俄然焦りが生まれてくるのだ。みんなと一緒じゃなきゃ不安というわけではないが、楽しいパーティーを指を加えて見ているばかりでは寂しいではないか。できることなら全部理解したいがなかなか持ち合わせた感覚とはそうもいかないものだというのを感じることが最近多い。最たる例が一昨年より一世を風靡し果ては主題歌歌手の紅白出演まで成し遂げた破竹の勢い「進撃の巨人」である。これがまた、ぐっと来なかったんだなあ…
見てくれこのポップ&キャッチーさ…すごい…4200万部コンテンツのパワーを持ってすれば世界観など些細な問題に過ぎません。兵長かっこいいでしょ!!という強力なメッセージが伝わってきます。かっこいいね。
「進撃の巨人」の凄いところは、マジで身の回りのマンガ好きを公言している人で読んでない人がいないところ。マジで。すごい読むよ~な人は勿論、普段ジャンルが被らない人も、おうちの本棚はカラーボックス1個だけだよ~な友人までみんな少なからず齧っている。pixivでイケメン二次創作するオタク層にも人気があって、かたや朝のめざましテレビでキラキラのかわいいアナウンサーが「心臓を捧げよ!」とかやってる。もう何が何だかって感じである。それがピンと来なかった私の完成ってもしかしなくてもアンテナが時代のチューニングに追いつけなくなってきなのでは…と慄いてしまう。マジョリティに属すことの安心感に慣れきっているが故に反旗を翻し堂々としていられない小心者である。なのでもう、ものすごく考えましたね。何故ピンと来なかったのかを。分からなかったけどね。
「進撃の巨人」叙述トリックの効いたミステリを読み終わったような感覚だなあと思った。だから商業的な売られ方と自分の押したいポイントがズレてて上手くハマらなかったのかなあ。なんでこんな皆楽しんでるのに自分に上手く嵌めこむことができないのかもう本当に歯がゆいっていうか悔しいんだ。そう、悔しいだ。この感覚。分からないは知ればいいんだけど、分かっても理解らないのはもう絶望的に手の施しようがない。ギャグマンガに対する一番の貶し言葉は「つまらなかった」ではなく「どこが面白いのか説明して」に違いない。 断絶の淵からかけられる言葉に共感への糸口を見つけるのはひどく困難であるように思う。難儀で不毛だからこんな論議はしないのがお互いの為だ。
「時計じかけのオレンジ」を見た時に感じた感覚は、進撃のそれとはまた全く別なのだが、世間で良いとされているものが自分にはダメという点においては同様のショックを与えられたのであった。
2014年 面白かったマンガメモ
何読んだのか忘れちゃうので記録に残しておくと後からおもしろいのではと思ってメモです。今年出た本ではなくて、読んだ本。
これだけはやろうと思って紅白見ながら2014年駆け込み。ランク順は無理でした。
ロボットものがあんまり得意じゃなくて…とか、まず「機動警察」っていう字の並びがゴツイ…とか、名前だけは知っていたものの何となく敬遠していたのを本当に後悔している。先入観も偏見も本当良くないなあ。
ゆうき先生の線の美しさがうっとりする気持ちよさで、特に野明ちゃんの大きな瞳の中の四角いきらきらはずっと見つめていたいくらいかわいい。少女マンガ大好き人間なので、遊馬と野明の関係がとっても大好きで大好きで、縁あって文庫版を全巻まとめて借りる機会があって、それから自分でサンデーコミックス版を買い直したのですが、表紙のカラーイラストが実に最っ高で入手してウッヒョー!と転げまわりました。
13巻のなんとも言えない距離感も、22巻のお仕事モードの信頼関係万全な感じもたまらないですね。ありがとうございます。
お話や世界観がしっかりしてるのは勿論、とにかくキャラ物としてこんなに面白い話だとは予想してなかったので、全方位にオススメしていきたい。今更…という気も激しくしますが、意外と自分と同世代だと読んでる人少ない気がするような
アニメはOVA版と劇場1だけ見て、まだ名高い劇パト2まで行きつけてないので早く観よう。
買ったっきりずっと積んでて、思い立って1から最終巻までまとめて読み通したらめちゃめちゃ面白かったです。
イケてない高校生活を送った私もまるでリア充だったかのように錯覚してしまう程、読んでいるこちら側を青春時代に引っ張り込む力がすごい。卒業する最終巻が切なくて涙が出たのは、雫たちみんながバラバラになってしまうことはもちろん、それ以上に「彼らはこれからの人生でもっともっと楽しい関係や思い出を積み重ねていけるんだろうなあ」って思ったからだった。唯一無二の素晴らしさを何度も作り上げていって、ちゃんと今その時を楽しんでいくことで、過去は「楽しかったね」の思い出の箱にしまえる子たちばかり。
・榎本ナリコ『時間の歩き方』
タイムスリップ能力を持つ女子高生、杉田果子(この名前だけでもうゾクゾクする!)は、事故で亡くした片想いの相手を能力を使って生き返らせようと試みるが…。
時をかける少女、或いはカゲロウデイズ、まどか☆マギカ、涼宮ハルヒ…はいはい、またこのパターンね、って思った人にこそむしろそっと渡したい。王道SFであることを厭わない、真っ直ぐに真ん中をゆく丁寧な作り。暖かな画風から染み出す硬質な設定。全4巻でミニマルにまとめきってくるところも完璧です。完璧なんだけどもう少し長く読めると思っていたから、ああ、終わってしまった。寂しい。
・古舘春一『ハイキュー!!』
やっぱり今年はこれは外せない!売れてるマンガはおもしろい!
出かけた帰りの電車で読み始めて止まらなくて明かりを求めて夜中ガソリンスタンドの電気の下で読んだ青城戦よ。売れてるマンガにタイムリーにハマると何が楽しいって熱量の高いファンの声がバンバン流れてくるのが最高に楽しいですね。
アニメでスキマスイッチが主題歌に抜擢されたのも仰天ニュースでした。
周りが軒並みスガさんにおちていくのを横目に見つつ私はノヤさんに心掴まれています。
・大今良時『聲の形』
知る人ぞ知る…と思っているうちに「このマンガがすごい!」1位に選ばれてあれよあれよという間に有名になってしまってちょっぴり寂しい。
自分の胸のうちにひっそりおさめておきたいんだけど、でも人にオススメして「読んで!」と言いたくなる複雑な作品。
まさか2014年になって「今年読んだ本」にNARUTOを入れる…勇気…
映画を見に行くために友人の家で合宿して読み通しました。愛は呪いと紙一重だなあと強く感じた
なんで少年マンガの兄はみんな死んでしまうんだ…
あと2014年はヤマシタトモコさんや雲田はるこさんなど一般誌で活躍されてる方の作品を過去に追っていって、まあ気付けばなし崩し的にBL解禁になっていたので、もういいやと思って割りと垣根なく買っている。新たなジャンルは掘り甲斐があって楽しいったらないですね…。知らないところに良いものたくさんある。
・井戸ぎほう『やさしくおしえて』
そんな中でも一番好きだったのがこれ。二組の兄弟の関係を描いたお話。
私は基本的に買った本は一回しか読まないタイプの読み方で、なのにこの「やさしくおしえて」は読み終わった瞬間に頭に戻って読み返してしまってしかもそれをもう一周してしまって、なんならまだずっと枕元に置いてある…。
嫉妬や悩みや傲慢さや、そういったぐるぐるする感情を表す時のちょっとした言葉の選び方の繊細さがひとつひとつ印象的で、ものすごくスッと気持ちが入ってくる。
もう言葉が足りないので一番好きなコマの絵を…。配置、ベタの乗せ方、丸い所四角い所の線の感じ、ペンの強弱、全部かっこよすぎる。ポストカードにしたい。 はあ。
・かわかみじゅんこ『いたいけざかり』
開いて数ページで圧倒的センスに引き込まれる。「冗談じゃないっすよ~~」の冗談じゃなさが伝わってくる感じよ…!
一編一編が濃いのでまとめて全部読もうとすると息切れする。じっくり日をかけて読んだ。
・新井煮干し子『ふしぎなともだち』
こんな関係を築きたい2014 No.1
・朝田ねむい『兄の忠告』
また…兄弟ものだね…。 この辺りで自分が身内贔屓というか兄弟姉妹ものにすこぶる弱いんだなということに気付いてきます。BLに嫌悪がなければマンガ読みの人には是非手に取ってみてほしい朝田ねむい先生。短編集なのですがどれも捻り方がズバ抜けていてマンガとしての創作の醍醐味を味わうことが出来る一冊だと思います。コミティアクロニクルとかよだれ垂らして読んでるタイプのあなたにオススメです。
・高松美咲『アメコヒメ』
アメコヒメ (POE BACKS/Beコミックス) (ポーバックス Be comics)
- 作者: 高松美咲
- 出版社/メーカー: ふゅーじょんぷろだくと
- 発売日: 2013/12/24
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何故かBLコーナーで出会いましたが、夢のように理想のボーイミーツガールですよ。
失うために手に入れる。持ってないを持っているだなんてキレイなことは言えないけど、尊さを感じるが故にどうしても近づけない相手対して、それぞれが懸命にかけるべき言葉を探す姿が魅力的です。
そしてこの本、ブックデザインが痺れるほどキマってるんだ本当…。表紙でピンと来たら手に取って表紙めくってカバー剥いてほしいそして呻いて欲しい絶対に
装丁は野本理香さん、最近だと『魔法少女俺』も手がけられてたらしい。これまた最高のお仕事…覚えておこう。
あと、最近は色々新しいシリーズをポン、と店頭でインスピレーション買いすることが増えてきた。 そういう買い方だと短篇集や読み切りの単巻刊行ものが手に取りやすくて、その中から良かったものをいくつか。
・堤谷菜央『人生は二日だけ』
最近多いタッチ…と言ってしまえば身も蓋もない、80年代テイスト。だがそれが良い。
「ライトナイトライト」の痛切さに共感して刺された。この表現力が羨ましい。
・米代恭『僕は犬』
一作目があんまりピンと来なかった米代さん、これはすっごく好きだった!
「正しい」ことだけしていたい実直青年が、弁論の女王のような少女の言葉遊びに掌で転がされて、培ってきた「正しい」価値観を容赦なく叩きのめされる展開はちょっとしたホラーだ。しかしその容赦なさっぷりは、汚さ故に自分の中でも目を逸らしてしまう逃げたい気持ちに、断然としたラベルを貼り思考を断罪してもらう快感でもある。青年と少女、ペットと飼い主、どちらが救ってどちらが救われたのか、その結末は最後まで読まないとわからない。
好きっていうのが憚られるんだけど、でもやっぱり好き。あとこの本の表紙は、帯のエッセンスの抜き出し方は、こうじゃない…!そこじゃないでしょ…!と激しく憤っている。攻め過ぎて受けての間口をせばめてるよお(実際自分も手に取るのちょっと躊躇ったので言う)
ていうか今調べたら公式サイトで全話無料で読める(!!)知らなかった…こうなるともう書籍購入は本当にお布施の時代なんだなあ
そして2014年総決算
ごめんなさい冒頭で順不同と言いましたが、これだけは別格だ。オールタイムマイベストだ。
日常ちょっぴりSF展開とか超絶好きすぎるのですが、超絶好き過ぎる作品でこんな超絶好みの展開を見せてもらって最後の最後まで本当に最高すぎた。ミドリちゃんと瞬ちゃんの関係も兄妹萌え野郎としては狂喜乱舞ものでしたし、モミジちゃんの告白の余白も、栄介くんの幸せになれないトリックスター感も。
最終回の掲載号だけ記念にとflowers本誌を買って読んだのですが、大きい画面で読むだけで迫力がこんなにも違うというを実感したのも衝撃だった。
鼻水すすって嗚咽を漏らして読んだマンガなんて久しぶりだっていうか初めてかもしれない。ほんと~~~に好きで、古本屋で見かける度に「私が保護しなければ」という謎の使命感に追われて抱え込みそうになるので本当に危険。
〜◯年後〜で描かれる結婚生活や未来、なぜ多種多様な作品様々なドラマを経て帰着するところがどれもこれも画一的な終着点なのだろう…とげんなりした気持ちになるので好きじゃなくて、そういう観点から見ても完璧すぎる幕引きで、理想の最終回でした。でもそこでぶん投げるわけじゃなくて、限定版にだけ付いてくる画集の最後のページでこっそり…っていうその慎ましさもほんっとたまらない。押し付けがましさがないが故に広がる空間、余白を感じる楽しさ、ていうか妄想、ていうか、ああ、本当にこの作品に出会えて良かったなあ。終わってしまってどうしようもなく寂しい、と終わらなければこの最終回に出会えなかった、の贅沢過ぎる二律背反に苦しむ幸せ。
もうなにがなんだかまとまらなくなってまいりましたが、来年は古典・名作系を探っていけたらなあと思っています。良いお年を。
殺すより愛せ/バッファロー'66感想
「バッファロー‘66」1998/米/ヴィンセント・ギャロ
出だしから喋り続けるビリー(ギャロ)の語り口がテンポ良くて引き込まれる。
レイラ(クリスティーナ・リッチ)を無理やり車に連れ込んで運転するよう命令する辺りから、自分が罵られ続けているようでイライラしてしまった。
中盤くらいまでがとにかく不快な会話がエンドレスの展開だった為、げんなりしてもういいかとなりかけるのを、ハッとするような映像に引き止められた。
思い出として語られるシーンが画面の中央からウィンドウのポップアップのようにぐ~っと広がっていく映像効果のかっこよさ。レイラに歌をせがまれたビリーの父親の場面では、部屋の赤い壁紙を背景にカメラがバストアップで固定され、映画の中に入り込んだミュージックビデオのよう。極めつけはボウリングでビリーに放って置かれたレイラのダンスシーン。すうっと光量の絞られていくボウリング場でやるせないタップを踏むレイラの色っぽさときたら!続く証明写真機によるプリクラ撮影でのビリーの微動だにしない真顔っぷりとレイラのキュートなポージング演技の対比もああ~って感じでビリーのとんちんかんっぷりが愛嬌だと見ているこっちに分かってくる、好きなくだり。
刑期満了を経て釈放された独り身主人公が、両親への見栄から嘘に嘘を塗り重ね「今高級ホテルにいてさ!妻?オレの横で寝てるよ!」と言うものの当然嘘乙とあしらわれてしまう。どうしようもないプライドの高さがなんとなくシンパシーを感じてしまって胃が痛いですね。
「ウソじゃねーって!!じゃあ連れてくから!!」と啖呵を切って電話を切ったものの、さて困った。通りすがりの女の子を強制連行して「お前オレにめっちゃ惚れてることにして。そんで俺の家族に俺の素晴らしさを説いて。お願い。」お願いっていうかガン飛ばして言ったらもう脅迫じゃーん ていうか書いてて気づいたんだけど最近こういうの見たな…と思ったらランチの女王だ。うーん二次元で一番うまく行くのはいつの世も先天的甘え上手のダメ男
レイラに共感できるか出来ないかで受ける印象が違うのだろうが、私はラストのはい・ハッピーエンド♡が本当に唐突にアメリカ味で「ええええっ」と思わず声を出してしまった。クライマックスの演出が好みだった分落とし所に余計目が点という感じである。 サライを流したくなるような愛は地球を救う・・・オール・ユー・ニード・イズ・ラブ
見終わってwikiを見て映画のキャッチコピーを知る。
「最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた」
納得。